ヘルドライバー

★★★★ SUSHI TYPHOONレーベル西村喜廣監督のゾンビアクション「ヘルドライバー」を観ました。正直今まで日本のアクション映画をみくびっていましたが、先日の「極道兵器」やこの「ヘルドライバー」を観て、かなり考えが変わりました。邦画頑張ってる!こういった作品がこれからもどんどん作られて行って欲しいものです。

謎の隕石が北海道に落下、その結果北海道から東北にかけて東日本が汚染されてしまいます。汚染地域に住む人々は感染者(所謂ゾンビ)となり、人間達を捕食するようになってしまったため、政府は東日本を隔離してしまうのです。しかし感染者達については議論が行われます。彼らを隔離するべきか、共存する道を探すべきか。そんな中、ちゃんとした実状を知らない有識者や政治家は感染者との共存を安易に唱え・・・コレ、3.11があった後に観ると非常にヤバいですよね。だって東北は「ゾンビエリア」とか言っちゃうんだぜ・・・。

そんな世界で軸となる物語は娘のタランティーノ監督の「KILL BILL」を彷彿とさせる復讐劇。主人公のキカ(原裕美子)は感染者の支配者となった母リッカ(しいなえいひ)から心臓を奪われ、人工心臓と日本刀型チェーンソーで戦う戦士となり、仲間達と隔離地域に足を踏み入れるのです。隔離地域では感染者達によって作られた混沌とした世界が拡がります。感染者達はいくらか意思を持つ者と完全なゾンビに別れており、ちょっとした社会を形成、そこに乗り込むキカ達は戦うことを余議なくされて行きます。ここから先の長いアクションシーンが評価の別れるところでしょう。CGの血しぶき飛び散るトンデモアクションはカッコいいのですが、ただ長い。正直観てて疲れます。こういったB級アクションは90分くらいに収めるのが適正のように思います。

低予算を感じさせない世界観の作りこみ。特に気に行ったのはまず感染者の設定。触角が生えたゾンビのような姿の感染者は、一般的なゾンビ同様ヘッドショットだけが息の根を止める手段です。触角は刻めば麻薬となるため感染者狩りを行う者達も現れます。この触角の設定によって感染者が一方的な捕食者にならないようにしたのが世界感に深みを与えたように思います。しかもこの触角は強い衝撃を与えると大爆発!これによって良いか悪いかアクションシーンは非常に派手なことになるのです。なかなかイイ馬鹿設定。主人公原裕美子はひどい大根演技ですが、怪演する母親役のしいなえいひに似たエキゾチック美人でまあいい感じ。総理役の鳥肌実の過剰演技とその行く末は必見です。しっかし鳥肌実知らない間に肥えたなー・・・。驚いたのがワンショット長回しで生きたゴキブリを調理して食べるシーン。おそらくアレは本当に食べてるでしょう。まあ揚げたらなんとかなるもんかなあ。「ヘルドライバー」、低予算の中でスケールの大きな話に持って行きすぎ、勢い重視のためディテールが甘すぎのため、合わない人はとことん合わないかもしれませんが、独特のカラーを持ったゾンビ映画としてはなかなか面白いと思います。ネタ切れ感の漂う洋画ゾンビに見切りをつけたゾンビファンの方、血しぶき飛び散る邦画を観たいという方に是非オススメです。

ヘルドライバー [DVD]

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